言葉の持つ意味合いに重きをおく日本人

何かの入学試験に向けて勉強を頑張っている人に対して「落ちる」や「すべる」「失敗」などの言葉を使用しないように注意する人も多いと思いますが、これらは縁起でもないことは言わないべきであるという、実に日本人らしい考え方ですよね。
このように相手の心中を察した上で慎むべき言葉は他の言葉に言いかえられ、そしてかえられた言葉のことを忌み言葉と呼びます。

忌み言葉はいくつもの種類がありますが、その全てに共通していることは「不吉なこと」につながるかどうかという点です。
例えば「アシ」という植物がありますが、これは「悪し」につながることから、「ヨシ」と言いかえられますが、どちらも同じ植物のことを表しているのです。

その他にも「ナシ」と付く言葉も「無し」を連想させることから「アリ」に言いかえられていることもあります。
東京にある「亀有」という地名は、以前は「亀梨」という地名でしたが、上記の理由によってその地名が変わったと言われています。
このように縁起が悪い言葉は言い換えてしまうのが日本の文化でもあるのですが、この文化は今もなお受け継がれています。

結婚式と忌み言葉

近年では結婚式の時に、よく意味言葉を耳にします。
お祝いの席で縁起でもない言葉は使用するべきではないと考えるのがマナーにもつながっていますよね。
結婚というお祝いの席であるにも関わらず、新郎新婦の二人が分かれることを連想させるような、「別れ」「切れる」「終わる」「出る」「離れる」などの言葉は他の言葉に言いかえられることになります。

有名なのは披露宴が終わった際に使用されることになる「御開き」という言葉です。
無事式も終わって、参加者がさて帰ろうかとする際には、「退席」や「退場」「式が終わった」などとは言いません。
必ず「御開きにしましょう」と言います。

また、新郎新婦の友人や上司から紹介のスピーチをいただく時でも不吉な意味を連想させる言葉は使用すべきでない、というのがマナーになっています。
「ケーキを切った時の…」と言う場合には「ケーキに入刀した際の…」といった具合に言い換えることになります。

その他忌み言葉

結婚式以外にも懐妊と出産、新居の新築、長寿など、お祝いごとはいくつもありますが、これらの際にも不吉な意味をほのめかすような言葉を使用するのはマナー違反になっています。
出産であれば、「流れる」や「落ちる」「消える」などの言葉は言い換えるべきです。

「月日の流れは早いもので…」と表現するのではなく、「早いものであれから○年が経ちました。」というように他の言葉で表現する必要があるのです。
忌み言葉は察しと思いやりによって出来た言葉ですので、相手のことを心の底から深く考えれば自然に言いかえられると思いますよ。