八十八夜とは
「夏も近づく八十八夜」というのは有名な唱歌である「茶摘」の出だしの歌詞です。
子供同士で手を組み合って行う手遊び歌としても有名なので、お茶の産地とは関係ない地方の人であっても何気なく口ずさむ歌としてなんとなく八十八夜という言葉はほとんどの人が知っているのではないかと思います。
この八十八夜とは正確には立春から数えて八十八日目のことをいい、現在の暦に直すとだいたい5月2日頃になります。
立春は2月初旬頃です。
八十八夜は日本独自の雑節の一つとされており、明暦二年(1656年)の伊勢暦に記載されたのが初めての記録として残っています。
正式な暦として認定されるようになったのはそれから遅れた貞亨三年(1686年)からのことです。
なぜ八十八夜であるかというと、漢字で書く「八」の文字は末広がりとして昔から縁起のよい数字として扱われてきたこともあります。
「八十八」という言葉を組み合わせると「米」という文字になるという語呂合わせからいつしか豊作を願うお祭りの日として知られるようになったといいます。
新茶祭り
この時に行われる新茶祭りは、日本ではお茶の産地である埼玉県入間市で行われるものが本場となっています。
入間市は有名な高級茶として日本三大銘茶に称される「狭山茶」の主産地であることから、八十八夜の日に合わせて茶摘み体験や新茶を使った料理の試食会、さらにその年の新茶をさっそく味わうお茶会などお茶に関する行事が大々的に行われるようになっています。
入間市の新茶祭りは世界的にも有名なお祭りとなっており、この日はまさにお茶づくしの大きな行事が執り行われています。
八十八夜の別れ霜
もう一つ行事として有名になっているのが、「八十八夜の別れ霜」というものがあるためです。
八十八夜の3日後には立夏が控えているため、八十八夜を境にして春から夏になるという季節の変わり目を祝うという意味も込められています。
またこの5月初旬は稲作をする人にとっても大切な種籾をまく時期でもあり、茶摘みの開始と同時に田植えを行うというまさに農家にとっては最も賑やかな時期であると言えます。
八十八夜の別れ霜という言葉は、八十八夜をすぎると夜には霜が降りることがなくなるということを示しているのですが、実際には山間部などでは立夏を迎えたあとも霜が降りてしまうこともよくあります。
ですが暦の上での縁起担ぎという意味で、今でもまだこの八十八夜を基準とした計画で農作物を作っているところも数多くあるようです。